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 ※毎週金曜日配信 2002年8月23日 第12号
経済論評
『インターンシップの勧め』
鈴木 文三 広島経済大学国際地域経済学科助教授


 8月17日の中国新聞に、「深刻さを増す若年失業」なる記事があった。若者の失業率が高まっており、最大の原因は、景気低迷がもたらす求人の減少だが、 そのほか、短期離職もその要因であり、その背後にフリーター急増の問題があるとされていた。なかでも、事態の長期的な深刻さを示すものとして、 若い時の失業は、将来の職業能力や技能形成を阻害するとの指摘があった。
 これを読みながら、思い出すのが、40年近く前に、東洋工業(現マツダ)へ入社した際の、2代目社長松田恒次氏による新入社員向け講話だった。 松田氏は、その独特の語り口で、「マツダは田舎の小さな会社だが、君たちに入社早々から金儲けして欲しいと考えるほどけちな会社ではない。 まず、10年ぐらいはしっかり勉強しなさい」と話されたのだ。すぐにも一仕事したいなどとはやる気持ちは無かった私にも、この言葉は非常に印象的だった。 当時の企業経営者の、人材育成にかける並々ならぬ決意の大きさを示すと共に、まず実績を積み上げ、周囲の自分に対する信頼をしっかりさせておかないと、 組織を動員しての大きな仕事は出来ないぞと語りかけておられたのだろう。
 ところで、全国の大学や高専の学生が参加するインターンシップが、近年盛んになりつつある。ここで言うインターンシップとは、 10日間程度の短期企業研修である。正しい職業観の醸成や人材育成に効果ありとして、近年政府が本格的に後押ししており、その規模は、 年間約3万人が参加するまでになっており、その数は今後一層増えることが予想されている。
 現在私も、広島経済大学で、各種インターンシップの推進に取り組んでいる。一般的な短期のプログラムに加え、2年間におよぶ事前、事後演習を取り入れた、 全国でも珍しい本格的なインターンシップを手がけているので、簡単に紹介したい。
 このプログラムは、2年次夏の2週間の国内企業研修と、3年次夏の4週間の海外企業研修を中心に構成されたもので、その狙いは、 国際ビジネスの第一線で活躍できる人材の育成である。2年間の事前、事後学習においては、企業や業界などの勉強とその結果発表などを主に行うが、 グループでの活動を基本としている点がポイントである。また、企業研修報告書作成の下準備として、学生の出席レポートを毎週添削して返却したり、 語学や異文化交流の訓練を行い、さらに挨拶や時間厳守の基本マナーも徹底するなど、非常に幅広い内容となっている。
 今年度の場合、履修者65名を7名の教員が指導するほか、学生達の活動拠点として専用スペースを確保するなど、もろもろの配慮がなされている。履修当初は、 専務と常務の違いさえ分からないほど企業に不案内な学生が、2年の間に、企業競争の厳しさや、最前線で仕事に打ち込む人たちの真剣さ、 人間関係の重要さなどを自分達なりに咀嚼し、日本の外に広がる世界の大きさ、多様さをも実感しつつ成長するのだ。
 企業が即戦力を求める風潮が強まりつつあると言われるが、一方、10年先とまでは言わないものの、ある程度の経験を積むことで、 いっそう役立つ人材に育ち得るような、そんなしっかりした基礎や姿勢づくりの重要性も決して揺らぐものではないだろう。そのような思いを込めての指導が、 好ましい職業観を学生が身につけるうえでの一助となり、それがさらに、短期の離職やフリーター志向増大への歯止めに役立つ、そのようなことを期待してのインターンシップ推進である。
【プロフィール】 鈴木 文三 (すずき ぶんぞう)
1964年 国際基督教大学卒業 東洋工業株式会社(現マツダ株式会社)入社
1964−99年 海外営業、海外広報、秘書室に勤務、その間、カナダ、アメリカ、タイへ約10年間駐在。
1999年 マツダを定年退職
現在  広島経済大学国際地域経済学科助教授、インターンシップ推進室室長
経済長編読物
 『「1兆円超」独り歩き 先行減税』(8月21日(水))

 小泉純一郎首相が指示した1兆円超の先行減税で、増減税を同額にする「税収中立」の期間や減税内容をめぐる議論が迷走している。 経済財政諮問会議と政府税制調査会は、企業向けの税優遇を通じて経済活性化を図る方針では一致しているが、減税方法や財源に関しては意見が鋭く対立。 中身の議論が深まらないまま減税規模だけが独り歩きする状態が続くと、税制改革が大きく変質する事態にもなりかねない。

 ▽4年と5年で対立
 小泉首相が指示した「多年度、税収中立」は、先に減税した分を将来の増税で取り返し、複数年度で差し引き同額にする発想だ。
 諮問会議の民間議員の念頭にあるのは03年度から2年間は減税、その後2年間は増税分を多くし、通算4年間でバランスをとる案。 背景には、諮問会議が中期経済財政展望で示した改革期間の最終年度が06年度になっていることがある。 改革実現を公約した期間内に税による活性化を終えないと、諮問会議の影響力に大きく響く恐れがあるからだ。
 これに対し、塩川正十郎財務相は5年間の期間を提示。03年度 に増減税が同時にスタートするが、当初3年間は減税分が上回り、残り2年は増税に比重を置く考え方だ。 減税期間を長めにして企業優遇の効果を高める狙いだが、その分だけ後年度の増税額が上積みされる可能性がある。

 ▽税率と財源でも溝
 増減税の期間以上に、先行減税の論議に影を落としているのが企 業優遇の具体策をめぐる意見の食い違いだ。諮問会議側は国税である法人税率(30%)の引き下げを強く主張。 一方、政府税調や塩川財務相は、短期的には研究開発の税優遇を軸にした政策減税の方が効果的としている。 背景には、恒久措置につながる法人税率下げは避けたいという財務省の思惑がうかがえる。
 減税財源をめぐる対立も深刻。諮問会議は、歳出削減分や活性化がもたらす自然増収、国有財産売却を財源に取り込むべきだとしているが、 財務省は将来の増税で返済する「つなぎ国債」による財源調達を容認する一方、その他の手段については財政規律の維持や確実性の観点から否定的だ。

 ▽野党も本格参戦へ
 政府税調は、国民の声を聴く対話集会を23日に広島市、24日に長崎市で開催した後、本格的な議論を再開する。 一方、塩川財務相は、企業が税制改正に速やかに対応できるよう、10月にも政策減税の規模や内容を明らかにする意向を表明。 相沢英之・自民党税制調査会長も議論の前倒しに意欲を見せる。
 企業が優遇され、個人が負担増になる構図が鮮明になれば、野党も本格参戦するとみられ、今後の議論の展開は予断を許さない。
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もみじフィナンシャルグループ「2002ディスクロージャー誌」発行

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