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 ※毎週金曜日配信 2004年12月3日 第129号
経済論評
『ガソリンスタンド業界にみる地元企業の経営展開の方向性』
 遠山 文雄 (財)ひろぎん経済研究所 主任研究員


 「ガソリンスタンド」というと、一般的には“ガソリンを売っている店”というイメージが思い浮かぶが、最近は少し趣の異なる企業が登場しはじめている。
 先日、私が家族を乗せて自動車で高速道路を走っていたとき、たまたま立ち寄ったガソリンスタンドのスタッフが「タイヤの空気圧が足りないように見えますので、点検してみましょうか?」と尋ねてきた。点検してもらったところ、タイヤにクギがささっていたので、すぐにタイヤを交換してもらい無事に帰宅することができた。
 私はその時、大野石油店の大野社長が、「お客様がガソリンスタンドに来店される頻度は、カー用品店や自動車販売店などより格段に多い。このため、ガソリンスタンドは、おクルマの安全性と快適性をチェックする“ピットイン”として、大切な役割を担っている」と話されていたことを思い出した。同社では、各ガソリンスタンドに自動車整備士(国家資格)と大手タイヤメーカーの認定を受けたアドバイザーなどの専門家を配置し、給油作業を行うかたわら、プロの確かな目で故障やパンクの有無などを確認している。広島市西区にある整備工場では、顧客の立会いのもとで最新設備を用いて車検を実施しており、年間車検台数は県内トップクラスである。
 このような安全性や快適性を提供する動きは、競合激化を背景として強化されてきた。大商圏である広島市では全国展開している大手ガソリンスタンド企業が多数出店しているが、そうした状況に96年の特石法廃止によるガソリンの輸入解禁、98年の消防法改正によるセルフスタンドの解禁などが追い討ちをかけ、ガソリン販売の採算が急速に悪化した。このため、車検・点検・修理・洗車など安全性や快適性を提供するカーケア事業を、一部のガソリンスタンド企業が積極的に強化しはじめた。
 しかし、給油作業はアルバイトでも行えるが、カーケア事業は専門的な技能を有するスタッフしか行えないため、人材育成が大きなハードルとなった。
 大成石油では、自動車整備士の資格を保有する多数の社員のなかから特に優秀な人材を「社内インストラクター」に認定し、彼らが講師となって主要営業エリアごとに毎月1回の教育訓練を実施。ここで培われた高品質なサービスを提供するため、スタッフの約70%を正社員で構成している。さらに、ハード面では、主要営業エリアごとに車検・修理工場を設置して迅速なサービス体制を整えたほか、「買い取り保証付きの新車販売(注)」、「中古車の販売・買い取り」、「車体の磨き加工」など販売からカーケアまでの一貫体制も構築している。
 (注)3年後の買い取り価格をあらかじめ設定し、販売価格との差額だけローンを組むことで、毎月の返済額を抑える形態。
 宮田油業では、従来より店舗個々の独自性を最大限尊重するため“個店主義”を軸として店舗運営を行なってきた。すなわち店長は販売責任のみならず店舗経営全般の運営責任者として大幅な自由裁量権を持たせられている。各直営店舗はいわば擬似子会社連合的な様相となっているが、最近ではさらに“個店”の“個人”をより強化徹底するための「個個主義」を推進している。これは、各店ごとのスタッフ個人すべてを来店客にしっかりと売り込んで個々の顧客と強い信頼関係を構築するという考えである。宮田油業は6年前より、燃料油販売主体からカーケア作業主体に軸足を大幅に移行させ大きな成果を上げてきた。同社の正社員は全員が国家資格整備士を保有し、店舗内施設は洗車設備からカーケア作業設備まで従来のガソリンスタンドとは到底思えないようなものが完備され、会社も社員も“独自性”をキーワードとする自立経営を標榜している。
 このような努力の結果、県内主要ガソリンスタンド5社では、粗利益に占めるカーケア事業の割合が56%に達し、ガソリンなど燃料油販売事業の割合(44%)を上回っている。給油は単純作業であるため、多数のスタンドとアルバイトのスタッフを保有する全国大手企業がスケールメリットを享受しやすい。しかし、カーケア事業では人材の育成と社内風土の醸成がポイントとなるため、スケールメリットは比較的働きにくい。しかも、社員が自分の技能・接客能力などの成長を実感できるため、会社全体に活気がみなぎってくる。
 近年、スーパー・家電・ホームセンターなど多くの業態で、大手企業が広島県内の出店を強化している。地元のガソリンスタンド企業のように、人材をコアとしてスケールメリットの働きにくい領域を強化する取り組みは、他産業でも参考にできるのではないだろうか。

経済長編読物
『韓国自動車業界4社に再編 現代自と外資激突へ』(12月1日(水))

 中国の自動車最大手、上海汽車がこのほど韓国の双竜自動車を買収、アジア経済危機に襲われた1997年から始まった韓国の自動車業界再編がひとまず完了した。
 韓国の自動車業界には各財閥が進出し、90年代半ばまで現代自動車、起亜自動車、大宇自動車、双竜自動車、サムスン自動車の5社が激しく争っていたが、再編の結果、韓国資本で残ったのは最大手の現代と現代に吸収された起亜だけだ。残りの3社は米ゼネラル・モーターズ(GM)、フランスのルノー、中国の上海汽車の外資にそれぞれ吸収された。
 まず、97年にマツダと技術提携していた起亜の経営危機が表面化。国内シェア(占有率)1位の現代は98年3月に2位の起亜を買収した。現代は三菱自動車からの技術導入でスタートした経緯もあり、生き残りをかけて三菱自と関係の深いドイツ・米国のダイムラークライスラーと資本提携したが、今年5月に同社との資本提携を解消、独自路線に転換した。
 3位の大宇はアジア経済危機で財閥の大宇グループが解体した後、2002年10月にGMに売却された。新会社GM大宇にはスズキ、上海汽車も出資している。
 韓国のトップ財閥サムスングループは、1994年に日産自動車と技術導入契約を結び、95年3月にサムスン自動車を設立。98年2月から日産車を基礎に生産を始めたが、グループ全体の事業見直しの中でルノーがサムスン自株式の70.1%を獲得。2001年9月にルノー・サムスン自動車となった。
 双竜は1998年1月に大宇グループに買収されたが、同グループの解体後、今年10月に上海汽車の傘下に入った。上海汽車は今後10億ドル(約1036億円)以上を投じて双竜を再建し、2007年には中国市場向けの10万台を含め計40万台の生産を目指す。

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