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 ※毎週金曜日配信 2002年8月30日 第13号
経済論評
『統計数字の限界』
村井 浩二 中国電力株式会社経済研究センター所長


 内閣府の新しい推計方式による4〜6月期のGDP速報(QE)が、ようやく今日(8月30日)発表される。新推計方式のポイントは、 (1)需要側の統計に加え供給側の統計も活用することにより、速報値と確報値との乖離を是正するという「精度向上」と、 (2)現行2カ月と7日かかっている速報値公表までの期間を欧米並みの1カ月と10日程度に短縮するという「早期公表化」の2つである。 これにより、1999年1〜3月期の速報値(同年6月公表)が年率7.9%のプラスであったのに対して、翌年12月に公表された確報値は年率3.9%のマイナスと、 速報と確報がまったく逆の値となったようなケースも、また、今年の1〜3月期のGDP推計が前期比年率で5.7%成長と、およそ実感とはかけ離れた値と なったようなケースも無くなるであろう。
 ところで、GDPの約55%を占める民間最終消費であるが、消費統計から消費の動きを見極めることはなかなか難しい。需要側の消費統計である「家計調査」は、 純粋に個人消費の動きを把握できるものの、(1)調査内容が煩瑣なため、調査対象がとかく調査に協力的な公務員や高齢者世帯等に偏り勝ちなこと、 (2)サンプル数が少なく全体の動きを捉えているとはいい難いなど、かねてから問題点が指摘されてきた。特にサンプル数は、高々全世帯の0.01〜0.02%に過ぎず 異常値に大きく影響される。中国地域でいうと、約300万世帯のうち調査対象は400世帯に過ぎず、例えば、1カ月の平均的支出を30万円と仮定し、 たまたま教育費などへの高額出費により、50万円の世帯が10出たとすると、地域の消費支出の平均を1.67%も押し上げる勘定となってしまう。
 供給側のデータにもいろいろと限界がある。大型小売店販売額についてみると、カバレッジは全小売店販売額の16%程度であり、 近年売上げが伸びている専門店の大部分は含まれていない。また、家電販売額は日本電気大型店協会加盟店の統計であり、 家電・情報機器専門店の売上高上位5社のうち4社は加盟していないし、年間売上高が5000億円以上と試算される秋葉原の電気店のほとんどは 協会に加盟しておらず統計から漏れている。自動車にしても、登録台数はほぼ販売台数に等しいことから高額物品の購入動向をかなり正確に示すものの、 価格の動きや車種別の売れ行きなども見ておく必要があるだろう。
 新推計方式の採用により、GDP統計は速くて正確になると思うが、いくら精緻さを求めても統計数値には一定の限界もあるわけで、 目先の統計数値の動きに過剰に反応することなく、中長期的な経済活性化を目指して、ミクロレベル(個々の企業レベル)での構造改革に腰を据えて 取り組むことが我々に強く求められているのではないだろうか。
経済長編読物
 『複雑さに投資家ら困惑 新証券税制』(8月28日(水))

 2003年からの新しい証券税制導入に先立ち、証券会社が納税手続きを代行できる特定口座の受け付けが9月から始まる。
 しかし新税制は、対応次第で課税額が大きく変わったり、複数の優遇措置が盛り込まれるなど仕組みが複雑になっており、 個人投資家ばかりか税理士ら専門家も困惑させている。
 証券税制の改革は株価対策の面もあるが、市場関係者の間では「複雑すぎる減税策では投資は促せない」との声が大勢だ。

 新税制は、売買益に対し確定申告を義務付ける「申告分離課税」への1本化が柱。まずは、いくらで株を手に入れたかを知るのが重要になる。 売却した場合に利益になるか損になるかで差がつくためだ。
 相続された株や、自宅に眠ったままの「たんす株」は取得価格の特定が難しい。政府は01年10月1日終値の8割の価格を代用できると決めたが、 この「みなし価格」が必ずしも有利とは限らない問題がある。
 例えばバブル期に約300万円でNTT株を購入。それが証明できずにみなし価格の44万4千円を適用し60万円で売るケースでは、 実際は200万円超の損にもかかわらず、利益が出たと課税されてしまう。

 購入・売却時期などによって非課税としたり税率を低くする優遇措置も、混乱に拍車を掛けている。投資家の株式保有を促すことが本来の狙いだったのに、 条件がばらばらで使い勝手が悪い。
 特定口座は投資家の負担軽減ために新設されたが、年末までに預けることを決めなかった株は、サービスの対象外となる。投資方針を再点検し適切な処置をとらないと、 将来の税額に影響を与える可能性がある。
 個人投資家を対象に証券各社は税制セミナーを開催、どこも盛況だ。だが参加しただけでは対応が分からず、個別相談を申し込む客が後を絶たない。

 証券会社は30兆―40兆円とされる「たんす株」の掘り起こしを狙って対応に追われるが、大手では10億円にも達するとみられるシステム変更費に見合う成果が上がるかは未知数だ。

株の申告分離課税 株の売買で得た利益に対し、投資家自らが確定申告し納税する方法。従来は利益の26%を納める申告制と、売却額の1.05%分で済む源泉方式の選択ができた。 2003年からは税率が6%引き下げられた上で、利益の20%を納める申告制に一本化される。現在は「個人投資家の約8割は手軽な源泉方式を選んでいる」(経済研究所)といわれる。


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