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 ※毎週金曜日配信 2005年2月18日 第139号
経済論評
『確率的なものの見方一考』
 妹尾 直樹 中国電力株式会社経済研究センター マネージャー


 「震度5弱の余震が7日以内に起こる確率60%」これは昨年の新潟中越地震における気象庁の発表である。 天気の良否を降水確率で測るのはすっかり生活に定着しているが、地震の発生予測も確率的になってきたことに驚いた。 と同時に地震のリスクをこれまで以上に客観的にかつ身近なものとして感じることができたのを覚えている。
 さて、気象予測に限らず、企業内においてもいろいろな意思決定の場面において、確率を考慮に入れて判断しようとする試みが目に付くようになってきた。 確率を考慮に入れて判断するとは、平均値だけをみて意思決定するのではなく、そのバラツキを見て判断するということである。例をあげてみよう。
 ある事業に投資することを考える場合、一定の前提条件(地域人口の推移、原油価格の推移etc)下における事業計画書を作成して、何年間で投下した資金が回収されるか、 コストに比較してどれくらいのリターンが得られるかなどで投資の是非が判断されることになるのが一般的である。あるいは、前提条件のシナリオを複数案用意して楽観ケース、 悲観ケースなどを作成し、標準ケースと見比べながら判断するということも行われてきた。
 一方、確率を考慮すると次のような判断が可能となる。
 前提条件をそれぞれ確率分布の形で与え、それらが起こり得る組み合わせをシミュレーションすることで、最終的な期待収益率を確率分布の形で得られる。 その結果、ある2つの事業の平均的な期待収益率についてa事業が10%、b事業が15%と算定された場合にも、すぐにb事業を選択するのではなく、 a事業は確実に10%相当のリターンが得られる事業(図a)である一方、b事業は−10%〜40%の間でリターンが大きくバラつく事業(図b)であることを認識した上で、 選択判断ができるのである。決定者はリスクをとってでも、高いリターンをめざすのであればb事業を選択するだろうし、確実なリターンを追求するのであればa事業を選ぶだろう。 平均値だけを見ていては、こうした合理的な判断はできない。
 近年、IT技術の発展と使い勝手のよい統計ソフトの開発によって、このような分析が容易に行うことができるようになった。 こうした技術の助けを借りながら、状況を客観的にとらえ、より合理的な意思決定を行うことが今後ますます大切になってくるだろう。

 ところで、このような確率を考慮した考え方を導入すると、これまで見ていたものが随分違った見え方をしてくる。今年度の経済見通しは民間シンクタンクも含め、 すでに出揃っているが、この経済予測を確率分布の形で公表してはどうだろう。
 その結果、例えばいつも強気の見通しを出すことで有名なシンクタンクAは、実はかなり幅広い分布で予測しており、案外弱気の部分もあることがわかったり、 一方、シンクタンクBの確率分布は、予測幅がかなり小さいことから、予測値に自信をもっていることがわかったりする。 あるいは、シンクタンクCからは「当社の予測は80%の範囲で予測が的中する」というコメントも出るようになるかもしれない。
 経済予測とはそれぞれの政策的な意図も織り込んだものであり、そんな確率分布で与えられるものではないという声もあろうが、研究テーマとしてはおもしろそうだ。

【プロフィール】 妹尾 直樹(せのお なおき)
1982年3月 早稲田大学政治経済学部 卒業
同  年4月 中国電力株式会社 入社
現在 中国電力株式会社経済研究センター マネージャー
経済長編読物
『ネット拡大が通信再編促す 米、寡占化で値上げ懸念も』(2月16日(水))

 米国で通信最大手ベライゾン・コミュニケーションズによる長距離通信大手MCIの買収発表など、通信会社の再編が相次いでいる。引き金となったのはインターネットの急速な普及。ネット関連収入が増える一方、従来の固定電話収入が減少、業界地図も様変わりを強いられている。再編で寡占化が進み、料金値上げにつながるとの懸念も出始めた。
 米国では約2週間前にも、地域通信大手SBCコミュニケーションズが長距離通信最大手AT&Tの買収を発表したばかり。
 固定電話離れで、今や通信会社にとってのドル箱は携帯電話やインターネット接続、企業向けサービスだ。接続サービスに関して利用者に直接営業できる地域通信会社では、ネット利用の急増が電話収入の減少を補って収益基盤の安定化に貢献している。
 逆に、利用者と直結する回線を持たないAT&TやMCIは、電話部門の収益減を補う事業がないため、市場では身売り話が絶えなかった。
 ベライゾンやSBCにとっても、ネット利用の急増に対応するため、米国や海外に張り巡らされた長距離通信会社の高速大容量ネットワークが不可欠。長距離通信会社の買収で最新設備を確保、さらに大企業や政府部門などの大口顧客を獲得し、事業の多様化を図る狙いがある。
 しかし、ベライゾンとMCI、SBCとAT&Tの統合が実現すれば、業界大手の数は大幅に減る。利用者からは早くも「寡占化」に懸念の声が上がっている。
 米国では、1990年代後半からの「ハイテクバブル」のころ、ケーブルテレビ(CATV)会社の統合が相次ぎ、その後、料金も引き上げられた。通信再編は「CATV料金の二の舞い」となるだけでなく、競争を促す新規参入が極めて困難になる可能性が高い。
 携帯電話関係では昨年、シンギュラー・ワイヤレスがAT&Tワイヤレスを買収し、通信大手スプリントも携帯のネクステル・コミュニケーションズの買収を発表している。かつて、独占を排除して競争を促すため、旧AT&Tは分割され多くの通信会社が誕生した。米通信業界は今、巨大化への道を後戻りし始めた。(ニューヨーク共同=津山恵子)

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