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 ※毎週金曜日配信 2002年10月4日 第18号
経済論評
『カキ産地の再生』
増岡 洋 (財)広島地域社会研究センター常務理事


 瀬戸内に秋の深まりを知らせるカキの出荷シーズンが始まろうとしている。旨味が最も乗る大寒の頃をはさんでこれから6カ月、 産地が最も活気づく。
 広島のカキは、養殖とはいえ太田川水系の栄養素で産出されるプランクトンを餌に柔らかく育つ天然モノである。 同時に海の富栄養化のもとになる窒素やリンを、カキと共に海から陸へ回収する働きをしている。すなわちカキ養殖業は、 自然の恵みを生かした環境共存型の地場産業なのである。
 広島県は、国内最大のカキ生産地である。その要因の1つは広島湾が世界的にみてもカキ養殖に最適な海域といわれるほど 自然条件に恵まれていることである。2つ目は、干潟養殖から筏養殖へ、いわば養殖のイノベーションに当産地がいち早く取り組み、 生産量を飛躍的に増加させ産地の名声を高めたことである。
 ところが近年、広島カキは生産量、シェアとも低下している。生産量(むき身)は、昭和63年の約3万2千トンが最高で、 全国シェアは70%を超えていた。平成10年、11年は赤潮の被害もあって、生産量は1万6千トン内外とピークに比べ半減した。 平成12年、13年には約2万トンに回復したもののシェアは約60%に低下した。
 このような生産量の減少とともに、広島のカキ業界は多くの問題を抱えている。第1は産地間競争の激化。様々な競争要素があるが、 ブランド化がポイントである。カキに限らず農水産物はブランド化が進んでいる。コシヒカリ、松阪牛、関アジなどが代表的である。 第2に養殖環境の悪化。海底の堆積物の増加、有害プランクトンの発生、埋立による海の浄化能力低下等により、 従来高い生物生産性をもっていた広島湾が老化していることである。第3に情報化。消費者の健康・安全志向から、食品の品質、 産地表示などに厳しい眼が向けられるようになっている。産地の潮の香りがするような新鮮な情報を発信し続けないと、 進化する消費者の支持は得られない。
 一方、追い風もある。イタリアで始まった「スローフード運動」、食の画一化に対抗し、郷土の特色ある食材や料理を守ろうとする 考え方である。わが国でも共感の輪が広がっている。いわゆる「地産地消」に似た考え方である。
 こうした中で産地生産者は何をすべきか。結論からいえば、(1)産地・生産者の明確な表示 (2)管理手法の標準化による品質管理の 徹底、である。極めて基本的な課題である。しかし、問題が山積し、それらが相互に絡み合い影響しあっている状況で、 進化する顧客ニーズに答えるには、上記(1)、(2)が問題解決の「扇の要」となるのである。
 実現のためには、現行の生産者の「ビジネスモデル」の変革が迫られる。同時に、「事業の共同化」が1つのテーマとなる。 すなわち、同一産地で同じ商品を同じように生産しているのであるから、各社の問題点、課題は基本的にほぼ同一と想定される。 これらに横糸を通すようにして、共同化による問題、課題解決を目指す。産地間競争において優位性を発揮し、顧客の支持を得るには、 一方では各社が「競争」しながら、同時に各社は「協調」すべきなのである。

経済長編読物
 『不良債権処理で減る選択肢 景気先行きに黄信号』(10月2日(水))

 日銀が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、景況感の改善ペースが鈍化した。春先からの景気回復を けん引してきた生産や輸出の勢いが衰えてきたことは、最近の各種経済指標も裏付けており、米国経済の失速懸念から 国内景気の先行きに黄信号がともってきた。
 小泉改造内閣の重要課題である不良債権処理は当面、デフレ圧力を高めるのは明らかで「景気がどんどん悪くなっていく 状況下で処理の加速は難しい」(内閣府幹部)。景気は回復か腰折れかの岐路に立つが、政府の経済運営の選択肢はますます 減っている。

 9月の短観では、大企業、中小企業の製造業、非製造業のいずれも経常利益を6月の前回調査から下方修正した。売り上げ 減に加え、想定為替レート(大企業製造業で1ドル=122円70銭)を円高に変更せざるを得なかったためだ。
 製造業では大企業、中小企業ともに前年度2けたの大幅増の予測を維持しているが、V字型回復≠ノも陰りが見えつつある。
 設備投資の動きも引き続きさえない。大企業製造業は0.3ポイント下方修正の前年度比9.2%減。前年度比マイナス水準にも かかわらず下方修正するのは、9月調査としては1998年以来だ。景気回復局面で製造業が下方修正するのは、米国や国内経済に 対する先行きの見方が厳しい表れといえる。

 雇用は過剰感が改善しているとはいえ、依然として厳しい状況で、設備投資を含めた内需回復は見通せない状況だ。
 ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎副主任研究員は「企業は設備投資の抑制や雇用削減という守りの姿勢を見せている。経常利益 の増加もリストラの寄与が大きく、回復感は乏しい」と指摘している。

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