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 ※毎週金曜日配信 2006年4月21日 第199号
経済論評
『時短の進展とその実情』
 森山 玲子 広島経済大学経済学部助教授


 新年度を迎え3週間が経過し、ゴールデンウイークの話題が世間をにぎわす時期になった。2006年の「ゴールデンウイーク期間中における連続休暇の実施予定状況調査」(厚生労働省、1,330事業場を対象とする)によると、連続休暇日数の平均は5.9日で、昨年を上回る。日々の多くの時間を仕事に投じる労働者にとって、大型連休は心と体をリフレッシュする絶好の機会である。
 経済的地位において高い水準に達している日本であるが、その地位にふさわしい豊かな生活を国民が享受しているかという点については、多くの疑問が投げかけられてきた。1980年代以降、年間総実労働時間1,800時間という労働時間短縮目標を掲げ、それ以降、着実に時短は進展し、1991年に2,000時間を越えていた労働時間は、2005年においては1,802時間という所期の目的を達成する水準にまで到った。
 しかしながらこうした労働時間短縮の数字は、果たして我々の生活において実感としてとらえられるほど反映されているだろうか。当然のことながら、賃金不払い残業(サービス残業)は、統計上の労働時間には計上されていない。経済のサービス化が進んでいく中、労働時間の比較的短い労働者の増加と、依然として長時間労働を行っている正規社員の二分化が進展している点も、見逃してはならない。また、有給休暇取得率は平均46.6%(2005年)と、先進諸国の中でも極めて低い水準にとどまっており、かつ、この10年間は低下傾向にある。加えて、長時間労働等を起因とする労災認定件数も、高い水準を保ったままである。一見、着実に減少しつつあるように見られる労働時間であるが、内実を見ると、ゆとりある豊かな生活の実現に近づいているとは言い難い状況にあり、統計的な数字と実態との乖離(かいり)を感じるばかりである。
 「労働」を意味する”labor”には、「労力」「骨折り」というニュアンスが含まれていることから、勤労を美徳としてきた日本と欧米諸国の文化の大きな相違がしばしば説かれる。また、仕事から解放された自由時間を意味する”leisure”は、「余暇」と表されるが、そもそも余暇とは仕事の合間などの「余った暇な時間」を指しており、このことから、日本人の生活の中心はあくまで労働であり続けてきたと解釈されることもある。日本と欧米の就業観の違いを考えるならば、欧米諸国並みの有給休暇日数・労働時間を一律に目指すことが、単純に「ゆとりある豊かな生活」の実現をもたらすとは考えにくい。数値目標というものは、極めて明確な到達目標を示すため多用されがちであるが、言うまでもなく重要なのは、その数値に達したときに現れる現実社会の状況である。1,800時間という数値目標に達した現状において、その内実を見据え、今後ますます進展する生活の多様化に対応する「働き方」の模索を急がなければならない。
【プロフィール】 森山 玲子(もりやま れいこ)
1999年3月 神戸大学大学院経済学研究科単位取得退学
2003年4月〜 広島経済大学経済学部助教授
経済長編読物
『止まらぬ原油高に決め手なく リスク高まる世界経済』(4月19日(水))

 ニューヨーク原油先物相場が1983年の取引開始以来、過去最高値を更新した。原油価格は高止まりし当面収まりそうな気配はない。物価への悪影響が心配され、インフレ懸念の台頭による金利上昇も不安材料。世界経済に冷水を浴びせる懸念が広がってきた。国際社会は価格安定に向けた有効策を見いだせず、苦境に追い込まれている。
 国際通貨基金(IMF)は最近の経済見通しで「原油価格の急騰は長期金利の上昇を招き、世界経済の大きなリスクになる」と警告した。
 米国の長期金利の指標となる10年物国債は値下がりを続け、利回りは今月、3年10カ月ぶりに5%の大台を超えた。
 原油高の影響を低金利で相殺してきた米景気の先行きに不透明感が強まっている。
 米国債など債券相場の下落(金利は上昇)で、投機資金は逃避先を探して原油などの商品市場になだれ込み、相場の急騰につながっている。
 昨年8月末、初の1バレル=70ドル突破の引き金となったのは、米国の主要な石油精製設備が集中するメキシコ湾岸への超大型ハリケーン「カトリーナ」の襲来という「緊急事態」だった。
 国際エネルギー機関(IEA)は湾岸戦争以来、14年ぶりに石油備蓄の緊急放出を決定し、その後相場は一時、50ドル台まで値下がりした。
 しかし、今回の相場上昇はイランの核問題やナイジェリアの政情不安など主要産油国の地政学的リスクの高まりが主因であり、IEAにも打つ手がない。
 米大手証券ゴールドマン・サックスは暖冬の影響で米原油在庫が積み上がり、ニューヨーク原油相場の水準を抑制したのが裏目に出たと分析。今後、上昇局面の本番を迎えるとし、今年後半は70ドル台が定着すると予想する。
 石油輸出国機構(OPEC)のラーマン理事(インドネシア)は今月17日、カタールのドーハで来週開く非公式協議で「生産枠を引き上げるべきだ」と呼び掛けたが、市場は反応薄だった。
 OPECの増産余力が最大の産油国サウジアラビア一国にほぼ限られており、効果がほとんどないことを市場は見透かしている。

経済サロン 藤井泰夫のビジネス談話室
『中国などの需要増と生産余力減で原油高騰』
    中国経済産業局資源エネルギー環境部長 中島英史氏(上)
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