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 ※毎週金曜日配信 2002年10月18日 第20号
経済論評
『いつまで続くデフレ?』
村井 浩二 中国電力株式会社経済研究センター所長


 かれこれ30数年も前のことになるが、経済学の授業で学んだわが国経済の二重構造とは、『わが国には一方において高度に近代化され生産性の高い大企業が存在すると同時に、 他方において近代化の遅れた生産性の低い多くの中小企業が存在している。この事実を経済の二重構造という』というものであった。 最近の二重構造論は、大企業と中小企業の併存ではなく、グローバルに競争する生産性の高い輸出関連製造業のセクターと、 規制と保護に守られた生産性の低いローカルな製造業および非製造業のセクターが併存しているというものであることはよく知られているところである。 マッキンゼーの試算がよく引用されるように、就業者の割合でいうと、総就業者に占める割合が高々1割に過ぎない前者の生産性はアメリカより2割も高い反面、 総就業者に占める割合が9割を占める後者の生産性は押し並べて低く、アメリカの7割以下であるといわれている。
 ところで、生産性の二重構造と裏腹の関係にあるのが物価の二重構造であろう。すなわち、国際競争に晒され極限までコストダウンを図りながら価格を下げてきた産業の製造品価格と、 規制に守られ競争とは無縁の、特に非製造業が提供するサービス価格の二重構造が存在しているわけである。今年の3月に実施された国民生活モニター調査でも、 日常的に利用せざるを得ない「医療サービス」「習い事などの月謝」「理容・美容」「上下水道」などのサービス価格は、モノの価格がほぼ一貫して低下しているのに反して、 まだまだ高止まりしている。つまり、わが国経済は製造業を中心としたデフレと非製造業を中心とした高コスト体質が共存している状態にあり、この状況の改善なくして、 わが国経済の持続的成長など望むべくもない。
 そこで、経済の構造改革ということで、製造業については、海外との価格競争に耐え得るような高付加価値品へのシフト等が求められるとともに、非製造業については、 規制緩和や公共料金の引き下げなどによって高コスト体質を変えていくことが求められている。ということは、構造改革の進展につれて、非製造業の分野における価格の低下圧力が増し、 今後さらにデフレ傾向が強まることを意味している。竹中平蔵経済財政・金融担当相のもとで加速化されるであろう不良債権処理もデフレ圧力を一層増すものであるし、 資産デフレ状態にあるといわれるアメリカ・ドイツ経済、物価下落傾向にある中国経済を見ると、この先当分の間は世界的にデフレ基調の経済が続くことを覚悟せざるを得ないのではなかろうか。

経済長編読物
 『株価下落で年金「火の車」 給付に影響も』(10月16日(水))

 株価の下落で年金制度に暗い影がさし始めている。公的年金や企業年金の積立金の一部が株式や債券市場で運用されているためだ。このまま株価が回復しなければ、 将来の年金支給に深刻な影響が出る恐れがある。
 最も影響を受けているのが企業年金だ。例えば、大企業のサラリーマンが加入している厚生年金基金は、保険料を株式や債券などの運用で積み立て、 企業独自の年金と国の公的年金である厚生年金の一部を退職者に支払っている。
 実際、厚生年金基金連合会の2002年3月末時点での調査によると、資産総額約51兆円のうち32%を国内株式で運用している。
 ところが、運用結果を見ると、01年度の時価ベースの利回りはマイナス4.16%と2年連続の赤字。最近の東証株価指数は3月末より2割近く下がっており、 本年度の運用はまさに火の車だ。
 同基金は、加入者に一定の利回りを保証して年金を支払うことを約束しており、実績が下回れば企業が自腹を切って穴埋めしなければならない。
 運用リスクを企業ではなく従業員が負う確定拠出年金(日本版401k)を導入する企業が174社(9月末現在)に達したのも、 こうした穴埋めを嫌った企業が増えているからだ。
 公的年金も深刻だ。少子高齢化に備え、国民年金と厚生年金で合計約150兆円の積立金を抱えており、その一部が株式や債券で運用されている。 01年度の利回りは1.94%と厳しい市場環境下では健闘したが、運用の中身をみると決して楽観は許されない状況が続いている。
 国民年金と厚生年金の積立金は、2つの方法で運用されている。1つは財務省資金運用部が財政投融資資金として特殊法人に融資し、運用する方法。 政府の責任で運用されるため市中金利より高い利回りで運用されている。
 もう1つの方法は、厚生労働省が運用機関を通じて株式や債券などで運用する自主運用。ところが、その結果といえば、自主運用資金約28兆円はマイナス2.48%、 02年4―6月もマイナス3.03%だった。つまり、自主運用の損金を財政投融資資金の収益でカバーした格好だ。
 しかも、08年度までには、積立金全額が自主運用されることになっており、株価の大幅な下落が続けば、積立金の目減りに直結しかねない。
 厚労省は「年金運用は数十年単位で考えるもので、短期的な運用結果に一喜一憂すべきでない」としているが、ある幹部は「日本経済がよくならない限りお手上げ」 と景気回復による株価の安定に望みを託している。

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