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 ※毎週金曜日配信 2002年11月1日 第22号
経済論評
『重視したい「物」から「とき」への流れ』
古川 隆 中国地方総合研究センター会長


 「不況」といわれているものが続いている。GDPを押し上げようとすると、その60%を占める消費の増加を来すような 条件整備がなされなければならない。不況といっても消費性向は70%程度に過ぎず、ゆとりはある。
 「物」を基準とした成熟社会に到達した結果、マズローの欲求5段階説の最上位の「自己実現の欲求」がごく一般的になってきた。 今、多くの人々は「物」よりは「自己実現とはなにか」 「自分の好きなものはなにか」などに軸足を移している。 このために必要なのは「時間」である。「時間」を生み出すために経済性は二の次として、近くの「コンビニ」で用を済まし、 ものによって「アウトソーシング」をする。「昼食」「掃除」のような対個人サービス業が伸びているゆえんである。
 自分のために実りある「とき」を過ごしたいとの願いは、高額となるが「ゆったりとしたクルージング」、 知的好奇心を満足させたいとの思いは、歴史の実地研修とか、美術館巡りに特化した「旅行」、さらにはNPOへの参画などに繋がって いる。また、食事にしても単に「生存の欲求」に基づくものではなく「実りあるときを過ごす」が大切であり、 「おいしい」よりは「楽しい」がキーワードとなろうとしている。
 ところでわが「広島」は、国際的には「平和」という知名度の高い旗印を持ち、世界的にもまれにみる「川」 「海」 「山」 という3点セットの立派な自然に恵まれている。しかし、これらを十分に活用しているであろうか。
 総領町の教育長和田さんによると、「ヒロシマのは重たい平和運動」とのことで、全く同感である。 「スワリコミ」に象徴されるようなことも理解はできるものの、現代人の「感興」には通じない。かつて修学旅行生のアンケートにあった 「広島は学習するところで、また来るところではない」が思い起こされる。
 「平和」の達成のためにも多くの人々を広島に迎え、楽しい、充実した「とき」を過ごしてもらうことが重要である。 まず、身近な「景観を攪乱するプレジャーボート」 「ゴミ」等を無くし、持っている有利な自然条件の付加価値を高め、 その基盤をもとに、人々の精神面の多様な要請に対応して、工夫を凝らし「憩い」 「学び」 「遊び」のできる街にすることが大切であろう。
 さらに、広島の人々が、地方分権の流れの中で、将来、「中・四国」での中枢性を保つべきと考えるなら、 広島を「人々が実りある時間を過ごせる都市」と位置づけ、他人事でなく各自の「知恵」 「労力」 「かね」 を積極的に提供すべきではなかろうか。そしてそうすること自体が広島を活性化し、都市間競争にも勝ち残れることになるであろう。

【プロフィール】 古川 隆(ふるかわ たかし)
1955年 神戸大学卒業 中国電力入社
1995年-2001年 中国電力 副社長
1996年-1999年 広島経済同友会 代表幹事
安田大学 客員教授・広島経済大学 特別客員教授
経済長編読物
 『有力紙買収で国際展開強化 NYタイムズ』(10月30日(水))

 米紙ニューヨーク・タイムズが、国際世論に強い影響力を持つ名門英字紙インターナショナル・ヘラルド・ トリビューン(IHT)の完全子会社化を決めた。IHT買収による具体的な将来戦略については口を閉ざし ているが、欧米メディア界では、国際展開で先行する米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)、英フィ ナンシャル・タイムズ(FT)の2大英字経済紙の追撃が狙いとの見方がもっぱらだ。
 WSJは米国内でタイムズをしのぐ約180万部の発行部数を誇るうえ、アジアで8万5000部、欧州で10万部 を販売。FTも世界で50万部足らずと小規模ながら、米国とアジアでの年間10%を超す部数拡大などにより 「多国籍化」を強めている。
 タイムズはインターネット版の拡充を除けば、国外の読者開拓に大きく出遅れた。米大手証券ゴールドマン ・サックスのアナリスト、ピーター・アパート氏はタイムズが「IHTをタイムズ色の強いブランドに変え、 タイムズの記事掲載率を増やす」と予想する。事実上の「タイムズ国際版」誕生のシナリオだ。
 IHTは昨年まで2年続きの赤字で今年も赤字決算が予想されているが、昨年の発行部数は約26万4000部で 過去最高を記録。国際的な知名度は高く、経済のグローバル化に伴う新規広告収入への期待もある。タイムズ はIHTの読者層や印刷、流通機能を使い、国際事業で一気に巻き返しを図る態勢を整える。
 タイムズは約35年間、ワシントン・ポスト紙と折半の出資でIHTを運営してきた。しかし宿敵との「呉越 同舟」の経営体制に終止符を打ったのは、リベラルな論調とは裏腹な「どう喝」的交渉術だった。
 ポスト側が保有株を譲渡しなければ、タイムズは国際版の競合紙を発刊し、IHTへの財政支援もやめると 通告。ポストは「極めて不本意で悲しい決断」(ドナルド・グラハム会長)で株式売却に応じた。
 IHTはポストにとって首都ワシントン地元紙の枠を超えた「国際的高級紙」の地位を確保する重要な足場 だった。しかしIHTを失った後は傘下の有力誌「ニューズウィーク」に頼るしかない。追い詰められたポス トの「次の一手」も注目される。(ニューヨーク共同=新井琢也)

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