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 ※毎週金曜日配信 2007年2月9日 第239号
経済論評
『資本市場参加者は節度ある行動を』
 渡邉 昌彦 広島経済大学経済学部教授


 好調な企業業績と堅調な株価を背景に、将来のさらなる成長を目指した設備投資およびM&Aの資金をエクイティファイナンス(株式発行を伴う資金調達)によって調達する企業が増加している。
 公募増資    2005年8693億円→2006年1兆6017億円、+7324億円増
 転換社債(CB)2005年1兆3213億円→2006年2兆6193億円、+1兆2980億円増
 (日本証券業協会〈暦年ベース〉)
 しかしながら、公募増資後、業績の悪化が判明し株価が急落して投資家が損失をこうむるケースも多々ある。また、市場から批判を浴びたり疑問を持たれている案件も見受けられる。例えば大手航空会社は赤字・無配でありながら発行済み株式総数の35%にあたる大量の新株発行を行い市場から批判を受けた。また大手鉄鋼メーカーは極めて複雑でわかりにくいスキーム(ハイブリッド証券)で3000億円のCBを発行した。好業績の企業がわざわざこのような複雑なスキームで資金を調達するのは会社が公表した設備投資が目的ではなく買収防衛のためではないかとの疑念を持たれている。いずれも「株主の利益」の観点からは、必ずしもプラスにならないとの批判・疑念である。
 「株主利益」の観点から大きな疑問を待たざるを得ないのは、転換価格修正条項付新株予約権付社債(MSCB〈Moving Strike Convertible Bond〉)である。このスキームは、業績が悪く公募増資も銀行借入も困難な企業が用いるケースが多かったが、発行手続きが簡単で機動性があり発行に要するコストも安いことから、ここ数年大企業も多く発行してきた。しかしながらこのスキームは、「株価が低下した時には、より多くの株式が発行され一株当りの企業価値の希薄化が起こり、その結果さらに株価が低下する」という、いわば「株価のデススパイラル」に陥り、既存株主の利益が大きく損なわれるリスクを抱えたものである。実際、急激に転換が進み株価が大きく低下したケースも見受けられる。「MSCBを買い取ったファンドのなかには、空売りを仕掛け株価を引き下げ、大量の株式を取得した上で、買い戻して大きな利益を獲得した」との憶測も飛び交っている。このような非常に危険なスキームは、新株予約権(ワラント)の発行の際にも見受けられるようになってきている。
 以上のような事例に加え新規公開企業のさまざまな好ましからざる事例の出来を踏まえ、金融庁は昨年6月、株主・投資家保護のため日本証券業協会(以下協会)に対して有価証券の引受審査を強化するため、「審査項目・内容の見直し、審査体制の強化ならびに第三者割当増資およびMSCB等の引受・買受け時の留意事項の明確化に向けた諸施策」を検討するよう要請した。これを受けて協会では昨年9月「新規公開時における引受審査強化内容」、同年10月「上場会社の公募時における引受審査強化内容」、同年11月「REIT、普通社債の引受審査強化内容」を公表した。またMSCB、MSワラントについても「引受・買受ける際の審査項目の策定、流通市場における取引のあり方」について検討が進められており近々公表される予定である。このような引受サイドでの審査強化は企業の安易な(あるいは無理な)資金調達に一定の歯止めをかけ、株主・投資家の保護の実現がある程度期待できるし、昨今の状況を勘案すればやむをえないものといわざるを得ない。しかしながら今回の規制強化によって改善が見られず、さらなる規制強化につながることだけはぜひとも避ける必要がある。
 金融ビッグバンで「フリー」、「フェアー」、「グローバル」の原則の下、企業の資金調達に関する規制は大幅に緩和された結果、さまざまなスキームが開発され企業は資金調達についての選択肢が大幅に増加した。所要資金の性格に応じてタイムリーに低コストで調達できる道が大幅に整備されたといえよう。大きな努力を払って整備されたこの制度を、がんじがらめの規制体制下でのコスト高の資金調達制度に戻してはいけない。
 また、企業の資金調達は直接金融のウエートが格段に高まっている。直接金融における資金の出し手は世界中の多数の投資家である。彼らは、「資金を出すに値しない」、「資金を出すと損をする」と判断した企業からは即座に資金を引き上げる。間接金融のように頼みこめばお金を出してくれるようなウエットな行動はしない。資金を出せないと判断された企業は、必要な資金が調達できないか、非常に不利な条件あるいはMSCBのようなリスクを抱えたスキームでの資金調達をせざるを得ないなど大きなハンディを背負うことになる。
 企業は資金調達に際して決められたルールの遵守、公平・適切・タイムリーな情報公開はもとより、さまざまな調達スキームの中から真に株主・投資家の利益の拡大につながるスキームを選択することが極めて重要である。また経営全般にわたり高度の規範意識を持った節度ある行動をすることが求められている。

【プロフイール】 渡邉 昌彦(わたなべ まさひこ)
1946年   香川県生まれ
1970年3月 神戸大学経済学部卒業
1970年4月 東洋工業(株)<現マツダ(株)>入社
1996年6月 資金部長
1999年6月 財務本部長
2001年7月 (株)ジョイント・コーポレーション財務部長
2003年4月 広島経済大学経済学部教授
経済長編読物
『日豪EPA早期締結で一致 豪首相』(2月7日(水))

 【キャンベラ6日共同】オーストラリアのハワード首相は6日、日本経団連の御手洗冨士夫会長ら訪問団とキャンベラで会談し、両国政府が交渉開始で合意した経済連携協定(EPA)について、早期締結を目指す考えで一致した。
 ハワード首相は、締結交渉について「すべての問題を討議したい」と述べ、小麦や牛肉、乳製品など農産物の重要品目についても交渉対象とする考えを強調した。
 両国のEPA締結をめぐっては、日本の衆参両院の農林水産委員会で、重要品目を関税撤廃対象から除外するよう求める決議が採択されるなど、農業関係者が反対姿勢を強めている。
 ハワード首相は「(両国間には)農業問題を含めて非常に複雑で難しい問題があるが、現実を見て乗り越え、より良い協定を構築したい」とも述べ、両国が納得できる現実的な対応を模索する考えを表明。「協定は(両国経済発展の)大きな機会となる」とEPA締結に強い期待感を示した。
 一方、御手洗会長は「難しい問題を克服して前進させ、包括的で質の高いEPAを期待している」と述べ、同首相に柔軟な対応を求めた。
 これに先立ち御手洗会長らはダウナー外相、トラス貿易相らと会談。御手洗会長が石炭、鉄鉱石など資源、エネルギーの供給国であるオーストラリアとの一層の経済関係強化を求めたのに対し、トラス貿易相は「(EPAで)資源の安全保障もカバーできればと思っている」と語り、資源、エネルギーの安定供給についても締結交渉の対象とする考えを示唆した。

経済サロン 中国新聞ビジネスインタビュー
『地産原料使い銘菓、直営店で着実に成長』
    あさひ製菓(株)代表取締役会長 坪野 功氏
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