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 ※毎週金曜日配信 2002年11月29日 第26号
経済論評
『不良債権問題と経済再生』
 佐藤明義 広島経済大学経済学部経済学科教授


 大手金融機関の不良債権問題の処理の進展とその影響が注目を集めている。
 全国銀行でみると平成4年度以来の不良債権処理額累計は82兆円に達するが、平成13年度末不良債権額は依然として42兆円 (貸出金の8.9%)もある。これに対し貸倒引当金残高は13兆円、不良債権額の31%に止まっている。 引当率が60%に達したとき不良債権問題解決とした米国の例や、土地価格や株価の下落で担保価値が低下していることを考えると、 貸倒引当は明らかに不十分で不良債権処理はいまだ道半ばであるといえよう。
 平成16年度までに不良債権処理を行い経済再生を図ることを目的とする政府の金融再生プログラムが、銀行の資産査定の厳格化、 新しい貸倒引当金額算定方式の導入、個別的引当の原則、担保評価の厳正な検証などの手段により、 貸倒引当金の積み上げを促進させようとするのは至極当然のことといえよう。
 90年代になって喪失した国富の額は、土地資産で820兆円、株式で114兆円、合計934兆円にのぼる。 この国富喪失のため企業は債務履行能力を失い、銀行の不良債権問題が発生した。資産デフレが進むなか、 不良債権問題とはこの国富の喪失をだれが負担するかという問題である。これまでその負担の一部は低金利により預金者が負っているが、 その大部分は銀行に集中し、銀行がこれを支えてきたが、ここにきて銀行の資産劣化、 含み益の喪失などによりこれ以上支えきれなくなったというのが現状であろう。
 健全な経済には健全な金融機関と金融システムが不可欠であり、経済再生には銀行の健全化が優先されなくてはならない。 当分資産価格の下落は見込まれても上昇は望めず、一刻も早い不良債権処理が必要である。 不良債権の早期処理は必然的に企業の淘汰をもたらし、失業問題など副作用をもたらす。 この痛みを軽くするためのいわゆるデフレ対策が必要であることはいうまでもない。 この痛みを理由に金融再生プランに対する批判も強いが、痛みを避けようとして金融再生プランを否定するのは正しいことではあるまい。
 重要なことは、不良債権問題処理は日本経済再生の環境を整えるということであり、 不良債権処理が経済再生を実現するということではないことである。
 企業においては、90年代に至って企業が生み出す年々の付加価値額(営業利益+人件費+支払い利息+賃貸料+租税) が伸び悩む状況からいかにして脱却するかが大きな課題である。付加価値の再配分を目的とするリストラでなく、 個々の企業において付加価値自体を増加させる経営、本物のリストラが志向されなくてはならない。
 貸し渋りや貸しはがし等は、これまでの土地を中心とした担保や個人保障に依存してきた日本の金融仲介システムが限界に 達したことの現れであり、不良債権問題が片付いても今のままでは機能しないことが懸念される。 日本の金融システムが大転換を迫られているということである。新しい金融のしくみの模索が与えられた重要な研究課題と考えている。

【プロフィール】 佐藤 明義(さとう あきよし)
広島経済大学経済学部経済学科教授(金融論、国際ファイナンス論)
東京大学教養学部教養学科国際関係論分化卒業。
三井銀行(現三井住友銀行)、さくら総合研究所主席研究員、国際証券調査部長などを経て 2001年4月より現職。拓殖大学商学部非常勤講師(証券論)
経済長編読物
『銀行トップ、表情さえず 株価急落は「お手上げ」 ―中間決算発表で一言―
(11月27日(水))


 大手銀行各行の2002年9月中間決算が出そろった。竹中平蔵金融・経済財政担当相の登場で不良債権処理問題に国民的関心が集まる中、記者会見に臨んだ各行トップは表面的には淡々と応じながらも、発表する数字は寒々しい内容で表情もさえない。 言い訳あり、決意表明ありの一言を集めてみた。
 竹中流処理を批判
 「何も環境が変わらないのに株価だけが動くのは困ったことだ」
 小さな声でこうつぶやいたのは、みずほホールディングスの前田晃伸社長。
 9月以降の株価下落に関してはこのほかにも、「株価には悩まされてきたが、妙手はない」(りそなホールディングスの勝田泰久社長)、「株の急な下げには、ややお手上げというのが正直なところ」(三菱東京フィナンシャル・グループの三木繁光社長) などぼやきが相次いだ。
 一方、肝心の不良債権処理では各行ともオフバランス化などを進め、最終処理を推進していると強調した。しかし、金融庁の「金融再生プログラム」の詳細がまだ決定していないため、各行とも最終的に今年度どの程度の処理積み増しが必要になるかは読み切れていない。
 みずほの前田社長は今月中にまとまるプログラムの具体策について「どう計算したらいいか分からないので前提にしていない」と話す。りそなの勝田社長はプログラムを厳密に実施した場合の赤字転落に関して、「程度にもよるが可能性はある」と認めざるを得なかった。
 三井住友銀行の西川善文頭取は「不良債権処理を加速させねばならないという認識は政府と同じ。しかし、米国の手法をそのまま導入できるか、日本の慣行とかルールの継続性などを考えねばならない」と、暗に竹中流不良債権処理を批判した。
 市場重視でリストラ強化
 この日は何人かのトップが「経営責任」に触れた。1兆1600億円の公的資金を受けているりそなの勝田社長は、「注入済みの資本を生かすのが私の経営責任」と強調。みずほの前田社長も「一刻も早く不良債権処理をやり遂げるのが私の責任」ときっぱり。もっとも、 公的資金の再々投入や国有化の構想がささやかれているだけに、トップの発言にはいまひとつ力が入らない。
 多くの銀行が追加リストラ策の説明にも時間を割いた。市場に評価される経営再建策が是が非でも必要になっているためで、決算の数字よりも、リストラ計画の解説に力を入れるトップも。
 ただ最後には、どの経営者も、「不良債権処理をがっちりとやって市場に評価していただきたい」(三木三菱東京社長)、「市場の評価を自助努力ではね返すべく努力したい」(西川三井住友頭取)と決意を表明していた。

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