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 ※毎週金曜日配信 2002年12月6日 第27号
経済論評
『成長か「ゆっくり」か?』
 村井 浩二 中国電力株式会社経済研究センター所長


 最近、「スローライフ」という言葉をよく聞く。イタリアで始まった食生活運動の「スローフード」からきた言葉だそうで、 熟年世代や女性を中心に共感度が高いといわれている。 特に戦後のわが国の経済成長を担ってきた熟年世代にとっては、 家族や会社のため我武者羅に過ごしてきた人生を振り返り、これからはもっと「ゆっくり」と、肩肘はらず暮らしていこうということであろう。
 国の経済についても、成長か「ゆっくり」かという議論は随分以前からみられ、例えば正村 公宏専修大学教授は、 1994年の『成熟社会への選択』のなかで「経済の規模をさらに拡大すること、いいかえれば所得や消費の水準をさらに高めることではなく、 もっとゆとりのあるバランスのとれた落ち着いた暮らし方を創造すること」が今後の課題とされなくてはならないと指摘されている。 また、最近では、広井 良典千葉大学助教授が、「豊かさを実現するのに経済成長は不可欠ではない。ゼロ成長社会でも十分な豊かさは実現しうる。 これからの日本は成長にかわる価値を見出す社会、すなわち『定常化社会』を目指すべきである」と主張されている。
 確かに、経済成長から「ゆっくり」へという言葉は心に響くものがある。わが国が低成長社会になっても、 少子高齢化の影響で人口が減少するため1人当たりの所得水準は減少するどころか増加する可能性さえあり、 短期的には生活水準は低下することなく「ゆっくり」した人生を楽しむことも可能かも知れない。
 しかし、長い目でみると果たしてそうであろうか。低成長社会は経済・産業活動の活力を低下させ、 企業はより高い所得やビジネスチャンスを求めて海外へ流出し、最終的には人の流出も起こってくる可能性さえある。 また、低成長による国の経済力の低下は円安を引き起こし、輸入品価格の高騰を招き物価を上昇させることから、 仮に所得水準の増加があったとしても物価の上昇と相殺されることになる。より重要なことは、 少子高齢化の進展による生産年齢人口の減少とも相まって、低成長では税収が増えないため、 膨大な財政赤字が今後も継続・拡大していくこととなるし、年金など社会保障制度は早晩維持できなくなることは明らかであろう。
 以上のことから、後の世代を含めて物心両面で本当に豊かな生活をおくるためには、1〜2%程度の経済成長は必要不可欠であり、 そのためにわれわれはもう一踏ん張りしなくてはならないと考える。ただ、いずれの社会を目指すにしても、 その選択はわが国の将来に責任を持つ若い世代に任せるべきだと思うし、若い世代も本気でこの国の将来像を考えてほしいと思う。
経済長編読物
『自主調整に高まる不安・中国地方 コメ大綱策定』(12月4日(水))

 国による生産調整の配分廃止―。農水省の「コメ政策大綱」は、予想されていた内容とはいえ、 中国地方の生産者や消費者に波紋を広げた。生産者は「受給調整ができなくなる」と不安を訴え、 農業者団体は「減反農政が行き詰まった国の責任転嫁だ」と反発。消費者団体は農業の地盤沈下を懸念している。
 「中山間地の農業は崩壊し、離農者が増えるだけだろう」。大田市の専業農家田原洋司さん(41)は危機感を募らせた。
 水田10ヘクタールのうち約3.5ヘクタールを大豆などに転作している。「農家と農協だけの生産調整は、どだい無理。 さらに減反しなければ価格は下がる。消費者を含め、主食の米について考えてほしい」
 広島県千代田町で水田6ヘクタールを耕作する橋本寅夫さん(52)は「うまい米を作ってきたと自負しているが、 国の関与がなくなれば農家の不満が噴出する」。東広島市の集落型農業生産法人重兼農園の本山博文代表理事(63)も 「赤字を埋め合わせるのが今も難しい状態。このまま競争原理を導入すれば農業が廃れ、集落自体が廃れる」と強調する。
 中国地方は、耕作条件が不利な中山間地域が7割を占める。この5年、岡山を除く4県は100%を超す減反実施率を達成。 昨年に続き今年も農協主体の青刈りも実施し米価維持に努めた。だが、自主流通米の価格は5年間で約20%下落。 市場に流通する米の5割の扱いにとどまる農協に、どこまで価格制御できるか疑問視する声も強い。
 「農協と国が協力して減反を達成できた。これを農家や農協でやれというのは国の責任転嫁。 東北などと同じ土俵で農業を論じるのは無理」と広島県農協中央会の黒木義昭専務理事。週内にも担当者を集め、 大綱の内容を協議する。
 「行政の力を借りなければ、減反達成は困難。今後も連携する」と島根県農協中央会。月末に県と担当者会議を開き、 年内にも米政策改革対策検討会(仮称)を立ち上げる。岡山県農協中央会も今月中旬に担当者を集め、 来年度の減反実施の協議などをするという。
 一方、広島県消費者団体連絡協議会(広島市中区)の岡村信秀事務局長は「米価が下がるなど当面の効果はあるだろうが、 米の生産・流通が不安定になるのでは」と指摘。コープやまぐち(山口市)の高木直哉常務理事も 「米が主食から食品の一つの位置付けになった。農家のコスト圧縮など短期的なメリットもあるが、 長期的には消費者に跳ね返る」と受け止める。
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