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 ※毎週金曜日配信 2002年12月27日 第30号
経済論評
『10回目の韓国研修旅行』
 川崎 信文 広島大学法学部教授


 この12月初旬、法学部行政学ゼミは10回目の韓国研修旅行を実施しました。例年のように5泊6日の日程で、 今年もまた14名の3年生が快く参加してくれました。
 この旅行のきっかけとなったのは、十数年前、今は全羅南道光州市隣りの羅州にある私立・東新大学に勤務する韓国の留学生、 金鉦丘君を指導学生として引き受けたことです。当時彼の兄上が教育学部の留学生としてすでに広島に滞在されていたのですが、 その兄上を頼って広島で指導教官を探しており、たまたま研究テーマが私の研究領域(地方自治・行政)と一致したという訳です。
 第1回目は、「パルパル」と呼ばれた88年のソウル・オリンピックの翌年でした。景福宮にはなお、元・朝鮮総督府の偉容は現存し、 その周辺には隊列をなした若い兵士が警戒を張るという物々しい雰囲気であったことを覚えています。
 この旅行を、あえて「研修」旅行と銘打っているのは、決して物見遊山の、ショッピングとグルメの旅にしたくない、 という私の個人的な思いからです。そのため、毎回わがゼミ生には、日韓双方にかかわる歴史の勉強を事前に行い、 片言のハングルを覚えさせることはもちろん、彼らの行動や言葉(日本語)はきちんとするようやや厳しく伝えています。
 言葉(日本語)というのは、2回目の旅行から、光州市の私立・朝鮮大学や国立・全南大学の日本語学科の学生さんと、 二日ほど行動をともにするというスケジュールを組んだという事情があります。5回目からは、 金君が就職した東新大学の日本語学科の学生さんが相手となりましたが、この二日間は日本の学生達が、 にわか日本語教師となるからです。バス旅行の車中で、また夜の宴会で、わがゼミ生と韓国側の学生が、 ほぼ一対二でパートナーとなるよう人数調整もして、この行事に臨んでいます。従って、韓国の学生に対しては、 普段のように単語だけで会話を成り立たせてはならない、ちゃんと主語・目的語・述語を用いて対応せよ、という指示です。
 さらに昨年からは、急ごしらえではありますが、「日韓合同学生シンポジウム」も実施するようになりました。 シンポと言っても、決して「歴史認識」や「教科書問題」がメーン・テーマとなるような固いものではありません。 恋愛や食事、アルバイトや就職活動といった双方の学生の日常生活に関する話題が質疑応答の主たる内容です。 そういう、いわば「小文字の」話題を通じてこそ、日韓の若い世代間の相互理解が深まる道もあるのではないか、 という思いがあるからです。
 相手側が日本語学科の学生なので当然のことでしょうが、日本のミュージシャンやタレントの共通のファンであることの発見から、 両者は急接近して行くのが、毎年のことです。宴会では、日韓双方が日本の歌もまじえてカラオケ・ ダンス合戦を行うのも恒例のイベントとなりました。今年は、日本側の学生がハングルの演歌を堂々と歌いきり、 韓国側から大喝采を受けるという、指導教官も予期せぬ喜びもありました。
 この2月には、広島で開催された私のゼミの同窓会に、東新大学の3人のOB、OGが、金君(今や金先生ですが)に伴われて、 はるばる駆けつけてくれました。彼らとは、もう6年のつきあいになります。私にとっては、1回目の旅行の時、偶然立ち寄り、 以後毎回必ず訪問する、ソウル・鐘路の焼肉屋のご主人ともども、懐かしい人に会いに行く「研修旅行」ともなっています。  帰国後すぐに行われた、来年度ゼミ生募集面接でも、この旅行のことを紹介し、多くの学生が申し込みをしてくれました。

【プロフィール】 川崎 信文(かわさき のぶふみ)
 1975年 広島大学政経学部卒業・名古屋大学大学院入学
 1983年 広島大学法学部助教授
 1992年 広島大学法学部教授
 ※法学部では、行政学(及び自治体論)の講義を担当。
  専門的研究領域は、フランスの行政及び地方自治を中心とする比較行政論。
経済長編読物
『矢継ぎ早に日銀を挑発 小泉首相に総裁カード』(12月25日(水))

 「財政も税制もぎりぎり。これからは金融政策だ」―。小泉純一郎首相は今週に入って、日銀に一段の金融緩和を迫る方針を表明。速水優日銀総裁の後任人事についても「民間人にできたらいい」と発言するなど、矢継ぎ早に日銀を挑発≠オた。
 補正予算、先行減税などのデフレ対策にも株価低迷は止まらず、万策尽きた感のある小泉政権は、金融政策に責任転嫁する「日銀いじめ」を始めたようにも見える。総裁人事というカードを手に協力を迫る首相と、崩れかかった中央銀行の威信を守ろうとする日銀サイドの「冬の陣」は、年内にも見込まれる新総裁内定まで続きそうだ。
 13日の経済財政諮問会議。出席した速水総裁は「金融政策の信頼低下を招きかねず不適切だ」と色をなして抗議した。政府の「改革と展望」改定案に「早期にプラスの物価上昇率の実現を目指す」と、日銀が抵抗してきた物価目標設定ともとれる表現があったためだ。
 この文言は結局修正されたが、福田康夫官房長官が「日銀は物価に十分関心を払ってほしい」と苦言を呈するなど、物価目標設定の圧力は強まっている。竹中経財相も17日の日銀金融政策決定会合に乗り込み「日銀はどういう政策でデフレを克服するのか」と積極対応を迫った。
 自民党幹部は「物価目標設定を首相や周辺に入れ知恵しているのは竹中大臣」と明かす。竹中経財相は自らのプロジェクトチームのメンバーで物価目標導入積極派の中原伸之・元東燃社長を次期日銀総裁として首相に進言。会見でも「小泉総理は民間の柔軟な発想を入れたいと言っている」と強調した。
 ただ先進国で例のないゼロ金利政策を続ける日銀は、10月にもデフレ対策に合わせて追加緩和を実施。銀行保有株の買い取りまで行って政府に協力姿勢を示しており、市場からは「これ以上やっても効果は薄いのに政府が無理強いしている」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)との声も聞かれる。
 9月の柳沢伯夫金融相降ろしでは共同歩調をとったかに見える竹中経財相の攻勢に対し、日銀内部では「自分の金融行政が講釈ばかりで進んでいないのに、外部のことにまで口出しする」と不満が高まる。総裁人事でも福井俊彦・元副総裁ら「身内」を推す動きをさらに強めるのは必至だ。
 「首相の腹の中では後任人事は決まっている。しかし外に出ればつぶれるから絶対に言わない」と内閣官房幹部。支持率が下落している小泉首相にとって、総裁人事は経済への取り組みをアピールする貴重な機会だ。「デフレ退治に積極的な人を選びたい」―。9月末の内閣改造と同じく秘密主義を守りつつ、一段の金融緩和という「踏み絵」を示して日銀の出方を見守っている。
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