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 ※毎週金曜日配信 2002年7月19日 第7号
経済論評
『ひろしま ブロードバンド時代』
栗栖 武士郎 
中国新聞社編集局計画担当委員/中国新聞情報文化センター 取締役マルチメディア本部長


◇ユビキタス社会◇

 パソコンとパソコンをつなぐ回線が高速になる、常時つなぎっぱなしでも料金は同じというインターネットのサービスが可能になった。
 こうなるとインターネットで迫力のある祭りの実況中継をすることも、ラジオの音声をたっぷり聞かせることも、電子メールで高画質のデザインを送ることも、何十ページものパンフレットをそのままの形で掲載することも可能になる。
 こうした高速大容量通信がもたらす情報環境の変化を称して「ブロードバンド時代の到来」という。もっと気の早い人は「ユビキタス社会を目指す」とも言う。人の解説によると、ユビキタスとは「神があまねく存在するという意味から来たことばで、どこでも、必要なときに恩恵が受けられる」というありがたい外来語だそうだ。

◇現実は甘くない◇

 しかし、現実はそう簡単でない。高速回線といいながら、一般の人の多くは光ファイバーが普及するまでの「つなぎ」サービスとして登場したADSL回線を利用していて、まだ「高速」の恩恵を十分に受けているとも言えない。
 また、本当に高画質の映像を楽しみ、大容量のデータをパソコンで自由に扱うには、それなりの能力があるパソコンが適していて、能力不足の場合はしばしば動作しなくなる。これを繰り返すと、たいていの人はイライラしてきて「何がブロードバンドだ」と怒り出す。
 それに加えて、楽しめるような情報や仕掛けは作りだすのに知恵もお金も必要なので、「情報や仕掛けはどこにでも、あびるほど」はない。情報の高速道路は高級車が列をなすほど走ってはいない。まだ「ユビキタス」どころではないのが現状だ。

 にもかかわらず、「e-JAPAN」構想を掲げる政府、電子自治体を目指す県や市町村、民間の情報通信系業種を中心に「ブロードバンド時代」への期待が声高に語られている。仕事の縁でこうした話に接する機会が多いが、私に言わせれば、関係する人々は期待どころか「よく分からないが、乗り遅れたら責任を問われる」といった式の脅迫にあっているような感じを受ける。

◇でも進歩はある◇

 これらの人々は全国的な高速回線網の構築、コンテンツ(送受信する情報、番組)の充実、人材の育成といった課題をあげている。すべて正しいと思う。

 便利なものは早晩普及するので、速くてつなぎっぱなしのサービスは質を上げながら広まっていくだろう。
 この春、紙屋町の中国新聞文化センターで、写真教室をモデルにした「遠隔講義&インターネット作品展」を行った。ネットを使ってより楽しく学ぶカルチャーセンターを目指した実験的な試みだった。NTT西日本広島支店と中国新聞情報文化センターのマルチメディア本部が協力して準備した。
 対象の年齢層がやや高いので心配だったが、実は全然問題なかった。60歳代の女性が「へえー、写真って、切り方で全然感じが変わるのねぇ」と別室の講師のトリミングの解説に感心し、インターネットできれいな写真を楽しそうにめくっていく。パソコンの回りは、好奇心と笑顔に包まれていた。シルバー世代は必ず対応してくると実感した。

 次の人材育成も時間の問題だろう。小中学校ではまだ手探りながら機会が提供されている。先日、中国新聞社を訪れた小学校4年生は「ボクのホームページもあるよ」と言っていたし、親戚の娘さんは大学のインターネット情報で仕上げることが課題のリポートを楽々とこなしていた。たぶんそれは、まだ「点」の存在だが、数が増えれば必ず「面」になる。

◇自信が最大の力◇

 パソコンと英語はこれからの必需品のような気がするが、コツは「使ってみる」ことかと思う。着メロだの街角おしゃべりだの、結構うるさい携帯電話ではあるが大勢の人が短期間に自分なりの使い方を会得した。
 私の世話している町の広報紙は、多くの住民がメールで原稿を送り、パソコンで編集され、月に1回、2600枚が楽々と刷り出されている。その気になれば、だれでもできることである。

 しかし、最大の問題は地方の自信のなさだと思う。フツウの人がどんどん手なれていくのに対し、行政や産業界の人は相変わらず東京には負けるというすり込み≠ゥら逃げられない。
 IT関係の催しは多くの場合、講師が東京からやってきて高飛車にしゃべっているが、本当は近くにいくらでも人材はいる。気の利いたデザインや映像は東京や大阪に頼むのがいいと思っている人も多いが、上手に地方の金が巻き上げられているように見えて仕方がない。
 情報化社会では知識や流行のコピーに要する時間が飛躍的に短い。どこにいても大差ないのだ。電子投票の先鞭は東京ではなく岡山県新見市がつけ、高齢の市民が難なく投票をこなした。
 中国新聞は劣化ウラン弾に関する国際リポートを英訳してインターネット掲載し、英語で出版した。原爆・平和関係の蔵書の電子図書カードを公開している。また、昭和34年から撮影してきた映像の内容をデータベースにして、いつでも引き出せるようにしている。どれも、新聞社として無理なく実行している。

 広島の経済界の方にぜひお願いしたい。インターネットの普及率だけみて遅れていると嘆くより、身近な仕事や生活の場にあるちょっとした試み≠励まし、実施に手を貸していただきたい。それが独創的な企画なら、なおのこと大切にしていただきたい。必ず大きな地域の民力になり、人々を活性化する。その利益は必ず企業のたしになるはず。「使ってみる」こと、それが自信を育て、力を生むと言ったら、大げさでしょうか。


経済長編読物
 『「外国経済の座標」 WTO加盟で鉄鋼輸入急増 中国』(7月17日(水))

 経済発展に伴う旺盛な需要に支えられて中国の鉄鋼生産と輸入が急増している。特に世界貿易機関(WTO)加盟と米国の鉄鋼緊急輸入制限(セーフガード)の影響を受けて輸入が急拡大、技術水準が低い国内鉄鋼業界を圧迫しており、業界の再編成は必至だ。
 粗鋼生産は1996年に1億トンを突破して世界第1位となった。第10次5カ年計画初年度の2001年は西部大開発などによる需要拡大や、活発な不動産開発、自動車など機械工業の発展に下支えされ、前年比約16%も伸び、1億4893万トンを生産した。
 中国政府は99年から技術レベルの低い粗鋼の過剰生産を背景に生産量を総量規制しているが、地方企業が従わず生産拡大が続いている。02年も政府は総量を1億2500万トンに規制する目標を掲げたが、既に1―3月に前年同期比20.5%増の4130万トンを記録し、規制目標値を大幅に上回る見通しだ。
 鉄鋼輸入は01年が前年比22.6%増の2540万トンと増加、半製品を除いた鋼材輸入だけを見ると02年1―5月は前年同期比で33%も増えた。
 輸入拡大はWTO加盟で関税が約2.5ポイント下がり非関税障壁も撤廃されたのが最大の要因。米国が発動したセーフガードの影響もある。
 中国政府も5月に暫定緊急輸入制限を発動したが、輸入製品の中心は今後の需要が強く見込まれる薄板や高級パイプ、ステンレスなど。国内では製造できない高付加価値製品が多い。
 中国の鉄鋼メーカーは約7割が年産50万トン以下の弱小企業で、製造する粗鋼も品質面で問題が多い。輸入圧力に直面して鉄鋼業界の再編成と技術レベルの向上が緊急の課題となっている。(北京、共同=中川潔)

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NEW 「GAS LAND」誕生(広島ガス社報「Good Life」から)

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