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 ※毎週金曜日配信 2004年2月27日 第89号
経済論評
『望まれる円の国際化への努力』
 佐藤 明義 広島経済大学経済学部経済学科教授


 2月の7カ国財務大臣中央銀行総裁会議(G7)は昨年9月以来の急速な円高に歯止めをかける契機となるか否かで注目された。 その後の為替市場の動きを見ると、105円割れ寸前まで進んだ米ドル安が108円台に回復し米ドル安に歯止めがかかったようにも見える。 しかし、米国の急膨張する財政赤字と貿易赤字、それに伴う米国の対外ポジションの悪化をみると最近の米ドル反発の動きは一時的なもので、 やはり今後の長期的な流れは米ドル安が進行せざるを得ないとみるほうが妥当であろう。
 会議後発表されたG7の声明文はとくに将来の米ドル相場の安定を保証するものとは解釈しがたい。声明は(1)為替相場は経済のファンダメンタルズを反映すべきであること、 (2)為替相場の過度な振れや無秩序な変動は経済成長にとり望ましくないこと、(3)為替相場の柔軟性を欠く主要国や地域にとり、より柔軟性が望ましいことを述べている。 これらは当然のことが述べられているに過ぎず、過去のG7声明のように各国別の具体的施策や各国がどのように協調するのかなどは何一つ読み取ることができない。 とくに米国の姿勢が読み取れない。むしろ「さらなる柔軟性が、国際金融システムにおいて市場メカニズムに基づき円滑かつ広範な調整を進めるために望ましいことを強調。」のくだりは、 米ドル相場を市場メカニズムにゆだねる方がよいといっているようにも解釈できる。
 現在進行中のドル安が二つの赤字という米国経済の影の部分の反映であり、しかも米国自身が経済成長抑制という犠牲を払わない限り止められない性質を持っていること、 欧州も日本も米国経済が後退するのは何とか避けたい気持ちが強いこと、国際的な不均衡是正はプラザ合意のときと異なり先進国間の調整ではすまないことなどから、 抜本的調整は避け、とりあえず米ドル相場の将来を市場の動きにゆだね、様子を見ることになったと理解している。
 日本政府は今年になっても為替市場介入によって円高に歯止めをかけようとしている。その根拠は現在の円相場は経済的ファンダメンタルズとかけ離れているからということである。 円高が実は米ドル安であり米ドル安が米国経済の弱い部分を反映していると市場が解釈している限り、日本の単独介入の効果はあまり期待できないのではないだろうか。
 われわれが円相場の動きに一喜一憂しなければならないのは国際取引決済における米ドルへの依存度が高く、円の国際化が不足しているからである。米ドルが基軸通貨であること、 国際商品価格の建値制度、国際取引の商慣習など、円の国際化が進まない理由はたくさんあり短期間に実現することは困難であるが、 長期的観点からアジアを中心に円の国際化を推進する戦略を練り着実に実行していくことが必要であろう。
 整備する重要なひとつの点は非居住者、とりわけアジア諸国の企業等にとって利便性の高い金融システムの構築である。90年代銀行の海外活動は大幅に縮小したが、 この回復を図り銀行はとくにアジアにおける円を使った国際業務を推進してはどうであろう。資本市場には外国企業の上場や非居住者のための社債市場の整備に知恵を絞り実現することが望まれる。 金融の当事者は東京市場をニューヨーク、ロンドン並みにするという金融ビッグバンの目標を思い起こしてもらいたいものである。
【プロフィール】 佐藤 明義(さとう あきよし)
広島経済大学経済学部経済学科教授(金融論、国際ファイナンス論)
東京大学教養学部教養学科国際関係論分科卒業。
三井銀行(現三井住友銀行)、さくら総合研究所主席研究員、国際証券調査部長などを経て 2001年4月より現職。拓殖大学商学部非常勤講師(証券論)
経済長編読物
『円高一辺倒見直しの動き 短期的な視点で』(2月25日(水))

 円相場が23日の東京外国為替市場で2カ月半ぶりに一時、1ドル=109円台前半まで下落した。経常収支など米国の「双子の赤字」を背景にした円高ドル安の流れは長期的には変わらないとの声が多いが、政府・日銀の円売り介入の壁が厚いことなどから、短期的には円高一辺倒の見方を見直す動きも出ている。
 為替相場は、過度な変動への懸念を打ち出した7日の米フロリダ州での先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)声明を無視する形でドル安基調が続いていたが、18日にユーロが対ドルで最高値を更新したのをきっかけに一転、ドル高へ振れ始め、20日の海外市場で円は1ドル=109円台まで売られた。
 ところが「日本がテロ警戒を強めた」との一部報道などのほかに、特段の円安反転材料は見当たらない。市場では「昨年9月の(ドバイでの)G7以降、過去最高規模に積み上がっていた円買いの持ち高調整で円売りが円売りを呼んでいる」(大手銀行)と見ている。
 政府・日銀は1月の7兆円超の円売り介入に続き、2月もフロリダG7を挟んで数兆円規模の介入を実施したもよう。G7で市場介入が容認されたとする日本の1ドル=105円の水準を死守する姿勢は、極めて固い。
 しびれを切らした投機筋などが円売りドル買いに転じており、大和総研の尾野功一研究員は「一方向だったドル安の流れが短期的には変わる可能性がある」と指摘する。
 ただ、調整一巡後は再びドル安に向かうとの見方が依然として大勢だ。米国の経常赤字は昨年後半から縮小傾向にあるものの、急速に改善する見込みは薄い。欧州中央銀行(ECB)は利下げや市場介入に踏み切っておらず、米連邦準備制度理事会(FRB)も利上げには慎重だからだ。
 証券大手リーマン・ブラザーズのジム・マコーミック外国為替調査部グローバル統括責任者は「G7後の市場のメッセージは、流れを変えたいのなら各国が政策を変えなければならないということ」と指摘し、円高傾向は続くと予想している。

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