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 ※毎週金曜日配信 2009年7月31日  第361号
経済論評
『地域FM放送での原爆番組』
 小野増平 広島経済大学メディアビジネス学科教授

 広島経済大学のメディアビジネス学科の教員と学生が中心になって始めた地域FM放送「ハムスター」が、8月11日で放送開始から3カ月になる。学生の教育に資するのが最大の目的だが、小なりとはいえ公共の電波を使ってのラジオ放送。いささかでも地域貢献できればと関係者全員が願っている。これはその地域と放送を結ぶ試みの小レポートである。
 放送は昼1時間の学生による「安佐南区だより」などの生番組を除いては、学科の教員、学生が中心となった90〜60分番組で構成している。例えば、私は月曜日の午後1時半から3時まで、90分の番組「時の話題 ハムスターOMM」(金曜日の午後1時半から再放送)を2人の学生と担当している。放送回数はすでに10回を超え、直近では64回目の8・6を前に「安佐南区と原爆」のタイトルで3回シリーズを企画した。このシリーズは7月20、27日と終え、残すは8月3日放送分だけである。
 シリーズのねらいは、広島市郊外の安佐南区に残る「原爆の影」を見つめなおしてみることに置いた。あの日から64年もたち、それも爆心から4〜6キロも離れた地域である。取材や材料集めが難しいかと思ったが、結果は懸念する必要もなかった。この地からは当日の朝、建物疎開などの勤労奉仕で多くの地区民が市中心部に出かけ犠牲となった。一方、からくも命をながらえた多数の市民が続々とこの地に逃れ来た。番組では、これらの話をつむぎ合わせた。
 1回目は、山の斜面にある経済大学のふもとにあった三菱重工業第20製作所を取り上げた。現在は買い物客でにぎわうイオンモールとなり当時をしのばせるものは何もない。資料を探していて第20製作所で施設課長をしていた喜利光夫(きり・てるお)さん=京都市、1995年没=の原爆体験記をみつけた。喜利さんは同社の勤労奉仕団350人の遭難を聞き、当日、翌日と市中心部に捜索に入り、黒い雨を全身に浴びた。体験記は全滅に近い奉仕団の惨状や、死体が散乱する市内の様子を伝えていた。
 2回目はイエズス会長束修練院とした。ここには被爆の実態を初めて世界に正確に伝えたアメリカ人ジャーナリスト、ジョン・ハーシーの「ヒロシマ」に登場するイエズス会のウィリアム・クラインゾルゲ神父(日本名・高倉誠)が眠る。墓地に詣でた後、修練院で出会った瀬戸勝介神父はクラインゾルゲ神父の思い出話のほか、長束まで逃れきた被爆者を収容、治療した修練院の大聖堂を案内してくれた。畳敷きの日本式の大聖堂は修理こそされているものの当時そのままに残っていた。
 3回目は、大学からもよく見えるNHK祇園ラジオ放送所である。かつて原放送所と呼ばれたここからは同盟通信記者によって、「広島全滅の第一報」が東京の同盟本社に向けて発された。被爆翌日の7日からNHK広島が放送を再開できたのも原放送所が無事だったからである。赤白に塗り分けられた高さ137メートルの放送アンテナ鉄塔。1943(昭和18)年に建て替えられ、被爆の惨状を見つめ、その惨状を全国に伝えた鉄塔は今も現役である。
 残念ながら放送にさしたる反響はない。しかし、郊外の安佐南区に「原爆の影」は思っていた以上にはっきり残っていた。見つめ直し、掘り起こしさえすれば過去はいつでもよみがえる。新住民の多い安佐南区民に少しでも64年前の事実の一片でも伝えることができれば放送した甲斐がある、学生にとっても、いい勉強になったのではと勝手に思っている。
 デジタル化が進んだおかげで放送電波の開放度は進んだ。地域FM、コミュニティFMは今や全国に200を超す。マスコミとしてのラジオ放送が衰退していく中で、ミニコミ的な地域FMに対する人々の需要は逆に増えているのかもしれない。メディアを考える学科に籍を置く身として、この地域FMの試みは大変だが、なかなか刺激的である。

経済長編読物
日本勢獲得なら最大級 イラク油田交渉

 イラク南部のナシリヤ油田をめぐる権益獲得競争がヤマ場を迎えている。新日本石油、国際石油開発帝石、日揮の3社が連合を組んだ日本勢と、イタリアの石油大手ENIの2陣営に候補はほぼ絞られたとみられ、イラク政府は近く最終決定する見通しだ。
 権益を獲得すれば、日本勢が中心となり開発・生産する油田として過去最大規模となる可能性がある。石油のほぼ全量を輸入に依存する日本のエネルギー安全保障にとって貴重な足場となりそうだ。
 イラクのシャハリスタニ石油相は今月上旬に来日した際、同油田について「最終的な生産目標は日量40万バレル」と言及。これは日本の一日当たり石油消費量の1割程度に相当するが、石油業界には60万バレルとの観測もある。
 日本の自主開発油田では、アラビア石油が権益を持っていたクウェートとサウジアラビア国境のカフジ油田が日量30万バレル程度でこれまで最大だったが、2003年までに採掘権が失効。ナシリヤの生産能力がカフジを上回るのは確実とみられている。
 イラクは世界3位の原油埋蔵量を誇るが、1980年代から戦争が続き、油田開発が遅れた。関係者によると、これまで発見された約80カ所の油田のうち60カ所余りが未開発という。
 復興を急ぐイラク政府は外資を導入するため6月、油田・ガス田8カ所を対象に約40年ぶりとなる国際入札を実施。年末にはさらに十数カ所の入札が予定されている。ナシリヤ油田はこれらとは別に、イラク政府が事実上随意契約の形で開発企業を選ぼうとしている。
 同石油相は来日時、ナシリヤ油田の権益交渉に関して「(決着まで)1カ月かからないよう望んでいる」と発言し、新日石の渡文明(わたり・ふみあき)会長ら日本側3社トップと会談した。
 日本勢が優位に立っているとの観測がある半面、「イタリアが巻き返している」との見方もある。ナシリヤ周辺ではイタリア軍が治安維持活動に携わった経緯があり、日本側関係者は「イラク政府にとって軽視できない要素だ」と警戒している。

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